原始の感覚

IMASENZ

狩猟採集は、人類史のなかで最も古く長い生活様式で人類の歴史の99%を占める生活様式です。狩猟採集民時代に作られた遺伝的傾向は、「倹約遺伝子型」と呼ばれています。高度文明への急激な変化の結果、人体の共生系を破壊している。

参考文献:人間性はどこから来たか

人はなぜ太るのか? 

現代人が肥満に悩むのは、狩猟採集民の「本能」を持ち続けているからである。狩猟採集とは、日々の食物を野生動物の狩猟活動と野生植物の根茎や果実などの採集活動のみから得ている生業で、人類史のなかで最も古く長い生活様式である。

農耕や牧畜のような食料生産手段が発明されたのは約1万年前にすぎず、これらの食料生産革命がおこるまでの数百万年の間、人類は狩猟と採集に依存して生活してきた。狩猟採集は、人類の歴史の99%を占める生活様式である。

狩猟採集民は、栄養学を知らない。それは食べたい物を食べたいだけ食べるということである。まさに私たちが、この好きな時に好きなだけ食べる習慣を維持しているので、太るのである。

味覚。糖を「甘い」と感じ、脂肪やアミノ酸を「うまい」と感じるのは動物が非常に古く獲得した能力に違いない。そもそも食物に「うまい」とか「まずい」といった「味」などというものは存在せず、脳がそう感じているだけである。

栄養のある物をおいしいと感じるような感覚受容器をもった個体は、能率よく栄養をとれるので、そうでない個体より多くの子孫を残したであろう。栄養価がより高い食物を、より甘い、よりうまいと感じる個体がこうして自然選択される。そういった食べものを求めるのは動物にとって適応的である。

狩猟採集生活では、食物供給は安定していない。大型動物を倒した時など一時的に過食で少しは太るだろうが、余分な栄養は脂肪として蓄えられ、食物の少ない時期の保険となる。狩猟採集民にとっては、食べたい物を食べたいだけ食べる過食は適応的なのである。

文明人は、高品質な食物を生産し保存する能力を得た。文明社会では、食物が少ししか食べれない時期などない。消費するエネルギーが少なくなり、好きな時に食べたいだけ食べるという「原始の感覚」を持ち続け過食する結果、様々な文明病を呼び寄せる疾患前駆状態である肥満になってしまうのである。

現代人は狩猟採集民

狩猟採集の生活様式といってもさまざまである。狩猟採集民の動物食への依存の程度は、緯度の高さに比例する。赤道から離れるほど動物蛋白に依存する割合が増え、極北に住むイヌイットエスキモー)の食料のほとんどは、哺乳類の肉である。熱帯サバンナに住む狩猟採集民サンブッシュマンは、植物性食品が60~70%、動物性食品が40~30%である。

狩猟採集民時代に作られた遺伝的傾向は、「倹約遺伝子」と呼ばれている。同じ狩猟採集民でもエネルギー源(カロリー)の大部分を生肉から摂取していたイヌイットとカロリーの70%を植物から得ていたサンでは、「倹約遺伝子型」の構成が異なる。民族によって文明と接触し、急激に食生活の変化させたときに現れる文明病の組み合わせは異なる。

ヒト一人の身体は100兆個の細胞の共同体であり、その一つの細胞も数千の古代のバクテリアが共生している共同体である。ミトコンドリアのように、もう細胞の一員になってしまったバクテリアもいれば、いまやっと平衝関係に達した害も益もないバクテリアもいるだろう。

アジアやアフリカ、数十年前の日本では、知られていなかった最近急増している疾患は、高度文明と関係がある病気アトピー性皮膚炎...)と思われる。高度文明化によって、高度文明以前に普遍的に存在した抗原が失われてしまった結果、人体の免疫体制がかつて抗原になりえなかった物質に対して過剰反応を引き起こし人体の共生系を破壊した可能性がある。

女は優れている

女は、甘み、酸味、塩味、苦味のいずれの味覚についても、男より感度がよい。女は男より正しく味を分類できるのだ。とくに苦み物質について性差は明瞭である。

植物は葉や茎などを動物に食べられないようにアルカイドなどの毒素やタンニンなどの消化阻害剤を生産する。それに対し、解毒能力を進化させた動物もいるが、ヒトを含む類人猿は「苦味」や「渋み」を感じてそれをできるだけ避ける方法で主に対処する動物である。

毒物に対し、より高い感受性をもっている女性とは、栄養が高く、有毒物質の少ない食物をすみやかに選び取る能力のある女性であり、そうでない女性より多くの子どもを残せただろう。

吐き気等の症状があらわれる妊婦のつわりの仕組みは、胎児を守るために脳が血中の物質のわずかな濃度を感じられるように、毒素感受装置の閾値を下げているためという仮説があるジョージ・ウイリアムズ)

女は男より、たいていの匂い物質に関して、わずかな量で匂い(嗅覚)を感じることができ、またさまざまな匂いを識別する能力にも優れている。母親は自分の子どもの匂いを他人の子どもの匂いと区別することができ、赤ん坊の便を嗅いで子どもの異常を察することがある。

狩猟採集時代、女性は採集の担当者だった。鼻の効く女性は多くの良い匂いのする良い食物をより効率よく見つけ、悪い臭いのする質の劣った食物を持って帰ることが少なかったであろう。

女は男より、接触、圧迫、温度、痛みなどのさまざまな皮膚刺激に対し、皮膚感覚(触覚)が優れている。 皮膚感覚が女の方が優れているのは、赤ん坊の世話と関係があろう。皮膚感覚の優れた女は、赤ん坊の発熱その他の異常をすみやかにキャッチできることになる。また敏感な触覚によって腐った植物とそうでないものを容易に見分けられるだろう。

痛みを感じるのが男の方が鈍いのは、男は闘争のさい、少々の苦痛に耐えて戦い抜かなければならないかもしれない。

女は男より音を聞き取る閾値が低い。つまり音を感じる能力(聴覚)が高い。とくに高周波数の領域でこの違いはいちじるしい。これは、女が赤ん坊の声、とくに泣き声や悲鳴に敏感でなければならないからであろう。睡眠時にも男より音に対する感受性が高いのは、これも赤ん坊を育てるときに必要な能力であろう。

男が女より優れている感覚は、視覚の領域だけである。静止しているものも動いているものも男の方が正確に見ることができる。また視覚の持続性、視覚的空間能力、視覚刺激の局在化も男の方が優れている。

これら視覚における男の優位性は、同性間で闘争する機会が多く、また早く動く動物を対象とした狩猟を主な活動としていたことと深い関係があるに違いない。

しかし、視覚においても明るいところから暗いところに移動したときの変化への適応や色の識別などは女の方が優れている。よく知られている性差に色盲の頻度がある。男の8%が色盲だが、女の色盲は0.5%にすぎない。女は採集のさい、色の区別ができないと熟した果実の発見が困難になるし、毒キノコを集めてしまうかもしれない。色盲の遺伝子はX染色体上にあるので、女は表現型として色盲になりにくいので、この遺伝子は淘汰されなかったのであろう。

男女の行動上の違いは、脳の配線の違いに由来する。本来、男女ともに胎児の脳は同じで「女性型」である。胎生三3ヶ月で、男の子にはY染色体のSR遺伝子のため男性ホルモンであるアンドロゲンが分泌され、そのため女性型の脳が男性型に変わるのである。

ヒトのかかる病気で先天性副賢過形成症(せんてんせいふくじんかけいせいしょう)という病気がある。副腎皮質ホルモンの合成酵素が欠損していて、アンドロゲンのみを異常に多量に分泌する。この病気が女の胎児が発症すると女ん子の多くは、おてんばになり、遊び相手として男の子を好み、野外での遊びを優先し、ままごとを好まない。アンドロゲンは、ヒトの左半球の大脳皮質の発達を遅らせ、右半球の大脳皮質(空間認知に関する)の発達を促進させる。

日本人の知恵に「一姫二太郎」ちいうことわざがある。第一子は女児、第二子は男児という順番がよいという意味である。女児の方が生命力が強いので、未経験の母親は最初の子として女児を扱う方が安全であるということである。

アカゲザルでも、雄は雌より病気にかかりやすいし、四肢の先天的異常も、骨折も雄が多い・雄の死亡率が高く、雌の方が長寿なのはアカゲサル、チンパンジー、ヒトどれでも同様である。チンパンジーでもヒトでも。雄の方がアルコール中毒にかかりやすい。

「脆きものよ、汝の名は女なり」とシェイクスピアは言ったが、それはまったく逆である。女は優れている。