刺激と反応の間

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刺激と反応の間にはスペースがあり、そのスペースをどう活かすかが重要である。

著者:スティーブン・R・コヴィー 
著書:The 7 Habits of Highly Effective People(7つの習慣
訳者:川西茂

ここで、私自身の個人的な体験を紹介したい。数年前、私はまだ大学で教鞭をとっていたが、執筆活動に専念するために大学から一年間の休暇をとった。そして、その一年を、ハワイのオハフ島の北海岸にあるライエという町で、家族と共に過ごした。

ある日、私はオフィスの近くにある大学に出掛けて行き、図書館の奥に山積みになっていた古い書籍の間を歩いていた。やがて私は、その中の一冊に大変興味を惹かれた。棚から取り出して開いてみると、ある一節に目が止まった。そして、そこに書いてあった言葉が、私のその後の人生を大きく変えることになった。

要約すれば、刺激と反応の間にはスペースがあり、そのスペースをどう活かすかが、私たちの成長と幸せの鍵を握っているということだった。

私は、何度もその文章を読み返した。その考えが私にどれほど大きな影響を与えたか、表現する言葉もない。自分の将来は自分で決めることができると教育されていたが、この「刺激と反応の間にスペースがある」という表現の仕方はとても新鮮であり、かつ信じられないほどの強い力をもって私の脳裏に刻み込まれた。そしてそれは、まるで「はじめて真実を知った」ような「自分の中で革命が起きた」ような、「時至れり」というような思いであった。

私は、再三再四その考えについて思いをめぐらせた。やがて、私自身がその刺激と反応の間のスペースに立ち止まり、自分を取り巻く様々な刺激を見つめ始めた。

自分は、この自分の反応を選択する自由を持っているという実感と共に、自分自身は周りに対する刺激にさえなれるということも、あるいは少なくとも影響を与えることができるということも分かった。

この革新的なアイディアの影響もあり、一年間を通して私たち夫婦が話し合い発見したことは、自身でも意識しない感情や選択にも、それに対しての刺激が存在するということだった。それは、私たちが自分たちの両親から強い影響を受けているのと同じように、私たちの行動も思いがけないほどの影響を子ども達に与えているということを、今までに増して深く知ることができたことである。

世代を超えて生きる

自分の人生において、脚本づけがどれだけ大きな影響を持っているかを知ることによって、次の世代に正しい原則に基づいた教えや模範を示す決心を新たにすることができた。私の著書「7つの習慣」では、主に、主体的に自分で書き直したい脚本について取り上げた。しかし、自分の脚本を注意深く見つめると、今まで意識もせずに当たり前だと思っていた脚本が前の世代から引き継いでいることに気がつくだろう。かつて次のように語った人がいる。「子どもに相続できるもので永遠の価値を持つものは二つしかない。ルーツと翼である」

流れを変える人になる

 子どもに「翼」を与えるということは、今まで引き継いできた悪い脚本を乗り越える力を与えることである。それは、流れを変える人になることだと思う。今までの悪い脚本をそのまま次の世代に引き継ぐのではなく、その脚本を変えるのである。そして、その脚本を通して、さらにお互いの関係が強められるのである。

仮にあなたが子どもの頃、両親に虐待されたからといって、あなたも自分の子どもを虐待する必要はない。心理学の研究によると、そうした脚本どおりの行動をする確立が極めて高いという。しかし、あなたには主体性があり、その脚本を書き直す力を持っているのだ。自分の子どもを虐待するどころか、彼らを愛し、肯定し、彼らに良い脚本を与えることができるのだ。

自分自身の両親を愛し、許し、健在であればその関係を築き直す道を歩み始めることさえもできるのである。あなたの家族で、何世代にもわたってつくられてきた悪い流れは、あなたの代で止めることができる。あなたは流れを変える人となり、過去と将来の接点になるのだ。そして、あなたの作り出したその変化は、将来にわたって数多くの人々の人生に大きな影響を与えることだろう。

「繰り返し行うことは、たやすくなる。行う作業の質が変わるのではなく、行う能力が増すのである」生活の中心に正しい原則をおき、行うことと行う能力を増やすこと、この二つの要素の良いバランスをつくり出すことにより、効果的で有意義な、そして平安な生活を送る力が与えられるのである。私たち自身のために、そして私たちの子孫のために。(超訳